ひよっここの春は朝ドラが大当たりで
そうです。ひよっこです。 

ここんとこずっとそうだったみたいなモデルになる人物はいないです。 
モデルは昭和です。
丸ごと全部昭和なんです。
あの時代の空気感、あの時代の皮膚感覚を表しています。

でも簡単に昭和って言っちゃっていいかなと思います。

四月三日から始まって、もう3分の1すぎちゃったんだけど、
まだまだ3分の1で、その3分の1で、どれだけいわゆる神回があったか。
もう記憶が曖昧になっているので、特に強力なのは
稲刈りのシーン。
15分間ずうっと稲刈りだった。
近所や親戚、家族全部で稲を刈っていく。
一年の田んぼの労働の集大成としての稲刈り
その晴れの感じが画面いっぱいに溢れます。

有名になったのが、茨城は「いばらぎ」じゃなくて「いばらき」ですの回

ヒロインの谷田部みね子の母美代子さんが上京して警察を訪ね行方不明になった夫を探して欲しいというシーンです。
私は出稼ぎ労働者を一人探してくれと頼んでいるんではありません。ちゃんと名前があります。茨城の奥茨城村で生まれて育った谷田部実という人間を探してくださいとお願いしてます。ちゃんと、ちゃんと名前があります。
ここがもう涙を絞りました。
これは人間の描き方のイロハのイです。ラベルを貼るんじゃなくて、ひとりひとりをちゃんと見ろと。そこを完璧にやりきりました。そして、当時の社会構造の中で人間を見る視点が失われていることと、一人の農家の女が主張する姿が見事でした。

それから、お歳暮のシーン

稼ぎ頭が行方不明になっている谷田部家は年越しに困るだろうと、美代子の友達、君子がお金を渡そうとします。美代子は友達だからこそ貰えないと固辞。すると君子さんはまた来るからと言い残してさり、もう一度来た時には背負子いっぱいに、鮭だの昆布だの、醤油だのいっぱい詰めて来て、「今年もお世話になりました。これは我が家からのお歳暮です。どうぞ受け取ってください」と挨拶するのです。これに対し、美代子は涙ぐみ、「ありがたくいただきます。来年もどうぞよろしくお願いします」と挨拶を返します。

お見事でした。
型どおりの挨拶というのは、いうに言われぬ思いを伝えるためにあるんだなと知りました。
これまた泣けました。

もう書きはじめるとキリがありません。 

村に一台走るバスの車掌さんの仕事への思い
東京の洋食屋さんで、コロッケ一個の注文に応じる姿勢
もう、たくさんたくさん書きたい。

そこにあるのは三丁目の夕陽的なノスタルジーではなく
人間の暮らしへの確かな視線なのです。

戦争の影もしっかりあります。
あるいは高度経済成長の裏でどんなことが起こっていたのか。
そうそう、失踪した実さんの暮らしていた部屋の有様には息を飲みました。
昭和30年代でドヤ街でもないのに、全くのタコ部屋でした。
イメージを持っていなかったので、驚きました。
そういう意味では、戦後の日本の庶民の暮らしを丁寧に描くことで
あの時代の総括になっているのかもしれません。

今日は、女工さんたちがお盆休みに海水浴に行こうと
水着を買うことにワクワクしてて
寮母さんは戦争で許嫁を亡くした人で
「生きてる人は楽しみなさい。
 私はお盆は泣いて泣いて、それからしっかり食べるの!と宣言します。

脚本は岡田惠和さん
朝ドラは、ちゅらさん、ひだまりに次いで三度め
しかし、ここ一、二年 進境著しいと思います。
昨年の「奇跡の人」も本当に見事でした。
奇跡の人で主役だった峯田和伸さんがひよっこにもヒロインみね子のおじさん役で出ています。


で、ひよっこですが
行方不明のお父さん、実さんが感じ変わって再登場
今週はどうなるかが期待されます。

朝7時半からBSで
8時から総合で
昼12時45分から総合で
夜11時半からBSで
計4回放送されます。

どれかでぜひご覧ください。